今回は返報性について、意味から使い方まで詳しく解説していきます。
自分が与えた分だけ相手から帰ってくる……というのはよく言われますね。
ただこれは相手にあげた分しかもらっていませんから、別に得はしていません。
しかし、心理学には自分が与えた分だけ、ではなく自分が与えた倍以上の分を相手に返してもらう「返報性の法則」という技術があるのです。
恋愛や営業では、自分が努力した分だけ思い通りに事が運ぶとは限りません。
自分がこんなに労力を割いて行動したのに余り利益が生まれなかった、ということもあるでしょう。
ですが返報性の法則をうまく利用できれば、少ない労力で多くの利益をあげることができるようになるのです。
この記事を読めば返報性の法則を完全マスターできるはずです。
そして周りよりもさらに一歩進んだ交渉術を身に着けてしまいましょう!
目 次
返報性の法則(規範)とは?
冒頭でもお伝えした通り、返報性の法則(規範)とは相手に与えた倍あるいは倍以上の見返りをもらえる心理効果です。
原理は単純で、人間社会の規範として対等な相手から何かをもらったらそれに報いる必要があるという原則があるからです。
規範として刷り込まれている心理効果というわけですね。
原則1 返報性の法則(規範)とは相手に与えた倍あるいは倍以上の見返りをもらえる心理効果
逆にいうと返報性の法則は、相手が対等でない場合やそもそも恩返しの規範を意識しないような人間には通用しないということを把握しておきましょう。
原則2 返報性の法則は、相手が対等でない場合や、恩返しという規範を意識すらしないような人間には通用しない
返報性の法則の基本的な原理や根拠を簡潔にお伝えしました。
次はより具体的な解説をしていきます。
参考
『マーケティング 「貴方から買いたい」と言わせるサービス心理学(1)ホスピタリティの重要性と返報性の法則』 松村 清
返報性の原理や意味は?
返報性の原理や意味は原則1のとおり、返報性の法則(規範)とは相手に与えた倍あるいは倍以上の見返りをもらえる心理効果です。
そして返報性の原理を効果的に利用するには、以下の3つのポイントを押さえておく必要があります。
1.極端なまでに強力な力をもっており、普通は要求を受け入れるか否かを決めるはずの諸要因の影響力を凌いでしまう。
2.望みもしない好意を最初に相手から受けた場合にも適用されるので、借りを作るならだれにしたらよいかを、自分で選ぶことができなくなり、その選択を他者の手に委ねることになる。
3.不公平な交換が導かれることがある。恩義という不快な感情を取り除こうとするために、人は親切を施された相手から何か頼まれると、お返しにそれ以上のことをしてあげることが多い。
上記の説明は普通のビジネスマンなども多く読んでいる有名な社会心理学の本『影響力の武器』の引用です。
もう少しわかりやすく説明しますね。
1は、返報性の法則を利用された場合、普段は要求されても受け入れないであろうことを受け入れてしまうことがあるということを述べています。
2は、返報性の法則を使われる側の立場ですが、返報性の法則はだれに対しても発動するために、不適切な人間に恩を感じてしまうことがあるといっています。
3は、恩を返すためにもらった恩以上のことをしてしまうことが多いといっています。
3に関しては、原則1に該当しますね。
これらは既出の原則(1と2)に加えて、実践でより効果的に利用するための原理です。
例えば1を把握していれば、返報性の法則で自分が相手に対してどんな見返りを求めるか? という点をより具体的に決めることができます。
2を把握していれば、相手から返報性の法則で利用されることを防ぐこともできますね。
そのようにこれらの説明は返報性の法則をより効果的に利用するための原理です(以下に原則としてかみ砕いてまとめました)
原則3 返報性の法則を利用された場合、普段は要求されても受け入れないであろうことを受け入れてしまうことがある
原則4 返報性の法則を使われる側の立場から見ると、返報性の法則はだれに対しても発動するために、不適切な人間に恩を感じてしまうことがある
以上返報性の法則の原理について、より詳しい解説をお伝えしました。
返報性を裏付ける心理学実験
返報性を裏付ける心理学実験としては心理学者デニス・リーガンが行った実験があります。
方法は以下の通りです。
リーガンの助手のAさんに、X集団のグループの中に紛れて仕事をしてもらい、休み時間に、ジュースをAさんが買ってきて、グループ全員に配る。
そして、仕事が終わった後に、X集団の人たちにチケットを買ってほしいとお願いする。
同様に、X集 団とは別の、Y集団の人たちと、仕事をしてもらって、今度は休み時間にジュースを買わないで、仕事を終えた後にチケットを買ってほしいとお願いする。
この実験の結果は、Aさんが事前にジュースという恩恵を与えていたX集団の人たちの方が多くのチケットを買ってくれた
リーガンさんの助手AさんはX集団にジュースという恩を売りつけたため、X集団からチケットという恩を返してもらえたというわけですね。
恩を売りつけていないY集団と比較した場合、X集団はより多くチケットという恩をAさんに返しているためこの実験は返報性の法則の存在を裏付けていると言えるでしょう。
つまり、
原則3 返報性の法則を利用された場合、普段は要求されても受け入れないであろうことを受け入れてしまうことがある を見事に証明しています。
しかしこの実験にはまだ続きがあります。
それは恩を売りつける側であるAさんに対する、XおよびY集団の好感度と、要望の承諾率の関係性をもきっちり調べているという点です。
具体的には先程述べた実験の後に以下のような方法で調べています。
Y集団では、Aさんに好感をもっている被験者ほど、より多くのチケットをAさんから買っていたことが明らかになった。
しかし、被験者がAさんからジュースをもらったX集団においては、好意度と承諾率の間の相関関係が全く無かった。
Aさんに借りがある被験者は、Aさんを好きだろうが嫌いだろうが関係なく、「借りを返さなければ」、という義務感を感じ、実際、その通りに借りを返した。
Aさんを嫌いだと評定した被験者も、好きだと評定した被験者と同じくらいのチケットをAさんから買った
上記の引用文を要約すると、恩を売られている集団であるX集団は、Aさんの事を好きか嫌いかにかかわらず返報性の法則に影響されていたということです。
つまり相手に対して返報性の法則が発動するかどうかに、相手が自分に好意を持っているかどうかは全く関係がないということです。
これは「原則4 返報性の法則を使われる側の立場の見方でいえば、返報性の法則はだれに対しても発動するために、不適切な人間に恩を感じてしまうことがある」にあたります。
ここから学べることは、返報性の法則はだれに対しても利用できるため非常に応用性があるということ。
そして逆に言えば、自分も利用される可能性があるということ。
返報性の法則は利用する側も、引っかからないように常に気を配る必要があることを示唆しています。
だれに対しても利用できる代わりに、自分も例外なくだれかに利用される可能性があるというわけですね。
以上、返報性の法則は非常に強力な心理効果ということでした。
返報性の具体例
この項目では.返報性の具体例を知ることでより体感的な理解をしましょう。
今回お伝えする返報性の具体例は以下の3つです。
- 既読機能における返報性の法則
- 商品購入における返報性の法則
- 交渉における返報性の具体例
以上の具体例の解説をしていきます。
既読機能における返報性の法則
既読機能における返報性の法則とは、「既読を付けたら返信をしなければならない」という考えの中に潜んでいます。
誰しも経験があると思いますが、ラインなどでやり取りをしていると、
- 既読を付けてしまうと「早く返信しなければ」と感じてしまう
- 返信を後回しにしたいから、相手のメッセージにあえて既読を付けずに放っておく
- 自分のメッセージに既読がついているのに返信がなかったら、「既読無視?」と感じて気を悪くしてしまう
このようなことってよくありますよね。
実はこれらの現象は、返報性の原理のなせるわざなのです。
つまり、
相手がメッセージを送る行為が恩を売る行為に当たり、それに対する返信が恩を返す行為に当たります。
返報性の法則とは「受け取った恩は返さなければと思ってしまう心理」効果ですよね。
メールなどのメッセージングアプリでは、恩(=メッセージ)を受け取るタイミングは可視化されませんが、ラインなどでは既読機能によってそれが可視化されてしまっています。
つまり、既読を付けたのに返信を返さないということは、恩を受け取ったのにもかかわらず恩を返さないようなものと言えます。
そして恩を受け取った側、つまり既読を付けた側は「恩を返さなければいけない」とそれを負荷に感じてしまうというわけですね。
以上のことから、
既読機能によって恩の受け渡しが可視化された結果、既読機能が返報性の法則を発動させるトリガーになってしまっているということが言えます。
同時にこの効果は返報性の法則である以上一定の強制性があるため、既読を付けて恩を受け取ったとしても、返信という形で恩を返す行為が面倒くさいと負荷に感じる人も多くいるようです。
また恩を売った側も返報性の法則に関して自覚がないため、恩が返されない、つまり相手から既読がついているのに返信が来ないという事態があると不快になる場合があります。
それらが重なった結果、実際にLineの既読無視が原因の痛ましい事件が多数発生しており、ここでも返報性の法則は非常に強力な心理効果ということが窺えます。
まとめると、
Line既読機能において返報性の法則は強く関連しており、それが既読無視からおこるさまざまな問題の原因となっているほどで、そのことから返報性の法則の効果の強さと原則3の実例を確認することができるのです。
参考
- 『メッセージングアプリの機能がコミュニケーションにおいて果たす役割に関する一考察』 森本 祥一
- 『LINE、スマホ 子どもの安全をトータルで考え、ネットの問題もいじめ防止対策の枠組みの中で取り組むべき (特集 川崎中1殺害事件が学校に問うもの)』 藤川 大祐
商品購入における返報性の法則
商品購入における返報性の法則は、一度無料で体験版商品をプレゼントしてくれるようなマーケティング方法に隠れています。
理屈としては、
無料でプレゼントする体験版商品などの無料特典などが恩にあたり、その後本当に買ってもらいたい商品を売りつける行為が、恩返しの強要に当たります。
たとえば新聞の営業が来たときに最初に無料のトイレットペーパーなどを要りませんか? と配ってくれることがあります。
「まあタダだしもらっておくか……」といって大抵の人はもらうわけですが、実はこの配布行為がまさしく恩の売り付けであり、ここに新聞会社の戦略が隠れているというわけです。
事実、無料でトイレットペーパーをもらってからしばらくたつと、営業がまたやってきて新聞を買いませんか? というわけです。
これが恩返しの強要に当たり、恩返しをしなければと思った消費者はまんまとトイレットペーパー以上の価格をする新聞を購読させられてしまうわけですね。
これは「原則1 返報性の法則(規範)とは相手に与えた倍あるいは倍以上の見返りをもらえる心理効果」に該当し、もらった恩以上の見返りを提供してしまっています。
これは補足ですが一度新聞を買ってしまうと、人間は自分の行動を一貫させようとする癖があるためなかなか解約という行動に出ることが難しくなってしまいます。
また「原則4 返報性の法則を使われる側の立場から見ると、返報性の法則はだれに対しても発動するために、不適切な人間に恩を感じてしまうことがある」があるため、
恩を押し付けてくる人間が、赤の他人である「新聞の営業」だとしても返報性の法則は発動してしまいます。
そのためもし自分の家に新聞の営業がきて何かを無料で渡そうとしてきても、受け取らないようにしましょう。
この営業戦略でやっていることは、無料でトイレットペーパーを渡した後に新聞を売りつけているだけです。
しかし普通に新聞を売るよりもあきらかに成約率が高く、相当の効果を誇るため昔から現在にわたって変わらず行われています。
これは「原則3 返報性の法則を利用された場合、普段は要求されても受け入れないであろうことを受け入れてしまうことがある」が関連していますね。
そのような形で返報性の法則が利用されている例は他にもあり、例えばスーパーの試食コーナーなどがあります。
つまりマーケティングなどではまず最初にどうでもいいものを渡したうえで(小さな恩を売ったうえで)、本命を購入してもらうという手法が存在すると言えます。
このように返報性の法則は、消費者に商品購入をさせるための営業戦略に多く利用されているというわけですね。
交渉における返報性の具体例
交渉における返報性の法則の具体例は、もっとも有名な心理テクニックになります。
というのもすでにドア・イン・ザ・フェイス・テクニックという固有名詞が付けられているほどで、営業のマニュアルにも載っているような有名な心理テクニックです。
方法は交渉時、「最初の交渉条件から相手に譲歩をすることで自分に恩を感じさせ、見返りとして交渉条件の受け入れを強要する」という形です。
もちろん最初の交渉条件は無理難題であることが多いです。
たとえばセールスマンの訪問販売などで物品を売りつける際、人にもよるでしょうが、最初は非常に高価な値段で交渉をします。
一個30円のみかんを300円で交渉したりするわけです。
これが最初の交渉条件にあたりますが、もちろん一個300円のみかんなんてよほどのことがなければ購入を断られます。
そこで値段を10円、断れればまた10円と下げていくわけですね。
それでお客さんが「この値段なら……」と悩み始めたところでさらに一気に値段を下げてみかんを買わせるというわけですね。
これが譲歩による恩の売り付けに当たります。
このように最初の交渉条件から、相手の望む条件に近い条件へ譲歩することで相手に恩を感じさせることができるようになります。
そうすると返報性の発動条件を満たすため購入という恩返しをしてもらえるというわけです。
以上返報性の具体例でした。
【恋愛に応用】好意の返報性で好きな人を振り向かす方法
返報性の法則は恋愛に応用することができ、その最たる例が好意の返報性というテクニックです。
具体的には、おごる行為などがそれに該当します。
理屈はおごることで恩を感じさせ、その上で見返りを要求するというものです。
この返報性の法則を利用した恋愛テクニックは強力で、おごられるといろいろ要求されて面倒だからおごりは受けないという女性もいるほどです。
既読無視の具体例でも出したように、返報性の法則には相当な強制力があるということですね。
その他の例として相手を褒めるという行為があります。
人は自分を認めてくれる(承認してくれる)相手のことを好きになります。
ですので相手のことを褒めるなど、好意を示せば相手からもその好意が返ってくるというわけですね。
ただし、上記の方法全ては相手にばれていないことが前提となります。
相手の感情を操作しようとしているという意図がばれてしまった場合、一気に相手から嫌われる可能性が高いのです。
相手を利用ないし操作しようとすることは、相手を認める行為とは正反対だからですね。
そのため相手を褒める、おごる場合はあくまでも自然に行いましょう。
また、過度におごりすぎたりもしないように注意しましょう。
相手が、こちらがあげた恩を負荷に感じてしまうからです。
既読機能の具体例でも述べましたが、恩返しの強制力というものは強力で非常に心理的な負担になってしまうことがあるのです。
その場合は逆に相手からさけられてしまうことは間違いありません。
ですので返報性の法則を恋愛にて利用する際は、ほどほどの利用量に抑えましょう。
【ビジネスに応用】返報性の法則を営業やマーケティングに活かす!
返報性の法則を営業やマーケティングに生かす場合についてです。
マーケティングで返報性の法則が利用されるケースについては、先に詳しく説明しましたね。
ここではまた別の使用例を紹介します。
ビジネスシーンでの、返報性の原理のさり気ない利用方法についてお伝えします。
さり気ない利用方法というのは、「相手に負荷を与えない程度に返報性の法則を利用する」ということです。
たとえば営業などで取引先と話し合いになったとき、率先してコーヒーなど飲料を出すなどです。
マーケティングでは文章として「あなたは美しい」といった文言があります。
これらは全て相手に対して、モノをあげたり、言葉で褒めたりすることで好意を提示する方法です。
この原理自体はすでにお伝えした好意の返報性の応用です。
しかし「率先してコーヒーを出す」などのさりげない行為は、今までお伝えしたものとは違い、言われなければ全く気づけないレベルのさり気ない方法ですね。
先ほども述べましたが返報性の法則はあまりに露骨な場合、相手に負荷を与えてしまう可能性があります。
そのためこのようなさり気ない利用方法が意外にも役に立つというわけです。
さりげない気づかいを重ねることで、相手は無意識のうちにあなたに対する恩を感じるようになります。
ぜひビジネスや営業の場面で利用できるようになりましょう!
【まとめ】返報性の法則を意識して行動しよう!
ここまで返報性の法則を利用するためにどのような点を意識すればいいのかを解説してきました。
返報性の法則とは相手に恩を売りつけることで相手からそれ以上の恩を返してもらうという心理テクニックです。
そしてその利用にあたっては以下の原則が重要だということも伝わったと思います。
- 原則1 返報性の法則(規範)とは相手に与えた倍あるいは倍以上の見返りをもらえる心理効果
- 原則2 返報性の法則は、相手が対等でない場合や、恩返しという規範を意識すらしないような人間には通用しない
- 原則3 返報性の法則を利用された場合、普段は要求されても受け入れないであろうことを受け入れてしまうことがある
- 原則4 返報性の法則を使われる側の立場の見方でいえば、返報性の法則はだれに対しても発動するために、不適切な人間に恩を感じてしまうことがある
返報性の法則を利用する機会は、記事中で解説した例のみに限りません。
日常生活から返報性の法則を効果的に利用するためには、上記の原則を意識することが重要です。
ぜひ返報性の法則をマスターして、あらゆるシーンで通常よりも有利な状況に立てるようになりましょう!
この知識をお金に化けさせるには??
このサイトが扱ってる内容はあんまりメジャーな内容ではないので、この文章を読んでいるということは、向上心が高くて勉強も頑張っている人なのだと思います。(たぶん)
是非とも「知識」と「実践」の両輪で、豊かな人生にしていきましょう!
⇒【完全無料】知識をお金に変えるメール講座への参加はこちらから!